シングルファザーハンドブック 4

全国父子家庭支援
ネットワーク
代表理事村上吉宣さん
インタビュー

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全国父子家庭支援
ネットワーク
代表理事 村上吉宣さん
インタビュー

■課題を一つひとつ整理して、未来を見つめてほしい・・・

父子家庭になると例えば離婚だと“自己責任だ”という目で見られるなど、精神的に追い詰められることがあります。しかし、父子家庭といってもいろんなケースがあります。死別もありますし、妻が産後うつや育児うつで子育てできなくなったケース、妻がギャンブル依存症になってしまったケース、妻が夢をあきらめきれず、父親が子どもを引き取り育てるケース、妻からのDVを逃れて・・・等など。

大事なことは、そこから、どう生きていくのかということになってくると思います。

私自身がシングルファザーとなってからの経験や多くのシングルファザーの相談を受けてきて感じることは、一つ一つのことを整理していくと、実は誰も悪くないね・・・ということです。

■上手に人の助けを借りて、生きてほしい・・・

父子家庭の支援団体を立ち上げてから、シングルファザーからの相談を受けますが、まず、落ち着いてと言っています。落ち着いて今置かれている状況を見ると、物事がこんがらがっているわけではないことが分かってきます。

私自身も父子家庭になったばかりの頃は、周りはすべて敵に見えました。でも今は、上手に人の助けを借りて生きています。失敗もいろいろありましたが、どう受け止めるかなんです。自分と長く付き合っている人は、「困ったときはお互い様」、「のぶちゃん、いい失敗だったね」と言ってくれます。

離れていく人は、物事を許せない人。縁を切り続けていく人。

こういうことに気づける人は、いろんな人の中で生かされていると思います。地域の人、友人の力、保健室の先生・・・。周りが敵ではないと気づいていける人は、生きていけると思います。

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■時間の壁

ただ、時間の壁だけはどうにもできないと思っています。仕事に充てられる時間は収入に直結するので、子どもの保育所の送迎に1時間もかかっていてはどうなのかと私なら考えます。

長く住んでいるところや実家の親の家の近くが必ずしもベストではないケースもあります。子どもの園や小学校、学童保育所がどれくらいの距離ならば、子どもや自分にとってベストなのか。そんな視点も時には必要です。相談を受けた時、地元にとどまる方がいい場合もありますし、都市部への転居を進めるケースもあります。

■父と子が共に過ごす時間を

例えば長距離のドライバーさんなどが父子家庭になると、常時家にいられませんので、児童の福祉施設や24時間の保育所などに預けて働くことになります。しかし、小学校に入ると24時間保育には預けられませんので夜は自宅に戻る働き方を選択することになります。しかし、長く一緒に暮らしてこなかった場合、子どもも戸惑いますし、父親も急には父親になれず、苦労するケースもあります。場合によっては、子どもが父親と離れ、児童の福祉施設に逆戻りということもおこっています。

日本は、父子家庭への福祉サービスはいくらかありますが、さまざまな面で父子家庭へのサポートが足りていないと強く感じています!

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全国父子家庭支援ネットワーク
代表理事村 上吉宣さんから
シングルファザーの皆さんへ贈る

「10箇条」

  1. 父子家庭のライフスタイル作りは
    自分らしく生きていく自分を許す事から始まる。
  2. 自立とは上手に人の力を借りながら生きる事である。
  3. その「正しい」は「優しい」とイコールであるかを自らに問い続けよ。
  4. 相談の仕方は、困り事「経済、仕事、時間、家事、対人、病気、メンタル」を区別して「◯◯で困っている。一緒に考えて欲しい」と話すことから始まる。共に「選択肢」を探していくことが、相談するということである。
  5. 父親業を1人ですることが父子家庭なのではなく親業を1人で行うのが「ひとり親」家庭である。頑張ろうとするのではなく、丁度良いペースを探すことから始めよ、「良い父親」を目指すのではなく「笑ってる父親」を目指していこう。
  6. 地域活動に参加することは、子ども達と自分が見守られて生きていく環境整備である。
  7. 制度利用(生活保護、障害者手帳、貸付金事業の利用、児童相談所のショートステイ)を利用する事は「マイナスな選択ではない」ただの制度活用である。
  8. 家事業のゴールは家庭内が家族にとって「ほっこり」とした安心・安全空間を作り上げる事である。
  9. 家族の総合力で勝負!子ども達も家事業の戦力に育てよう!
    それは「生きる力を、時間の使い方を、段取り力を」育てる教育となる。
  10. 過去の父親の生き方はロールモデルにはならない。
    自身に染み付いた男らしさを疑い、働き方を疑い自問自答せよ。
    自分達が子ども達の新しいロールモデルとなれるよう示すことを意識せよ。
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村上さんからの
応援メッセージ

いかに自分の手が足りない時に人の手を借りることができるかー。
この力をつけることが大切です。一人で頑張るのはカッコ悪いと思えるようになれればいいですね。最初はだれでも初心者です。子どもは人とつながりながら子育てしている父親の姿を見ていますよ。

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